私は中学生の頃から不眠症で、27歳ですでに不眠症歴15年以上になっていました。
もはや「眠気ってなんだ?」状態で、睡眠導入剤では中途覚醒してしまうため、強めの睡眠薬を毎日服用して何とか眠っていました。
しかし、ある時に変なきっかけで不眠症が改善し始めたのです。そして今では、一切薬を飲むことなく毎晩ぐっすり眠っています。
なかなか普通ではない体験談なんですが、治し方としてはある意味アリなのではないか?とも思うので、体験談と共になぜ治ったのかについての考察も含めてまとめたいと思います。
眠れない今だからこそできることに挑戦
タイトルでもネタバレしておりましたが、きっかけは鶏の孵化です。
我が家はド田舎にあり、近所では庭で鶏やチャボを育てる農家さんも数件あるようなところで、村というか、山の中に数件家が建っているという感じのところです。
ある時、鶏の有精卵を知り合いからいただきました。
「温めると孵るよ」という話を聞き、どうしても気になったので、人工ふ化に挑戦してみることにしたのです。
というのも、生き物が好きということもありましたが、何より、当時は徐々に睡眠薬を軽くしていたころで、夜もほとんど眠れていなかったからです。
強めの睡眠薬を何年も服用していたのと、うつ病の薬もたくさん飲んでいたので、少しでも体に負担をかけないように睡眠薬だけでも軽くしてくださいと言って、病院でお薬を弱くしてもらっていたんですね。
だから眠れない夜を過ごしていたんですが、鶏の孵化というと、生まれるまで4時間おきに卵を転がさないといけないのです。
普通なら無理ですが、眠れない私には丁度よかったんですよね。何かやることがあるというのは、気も紛れます。
なにより鶏の孵化なんて、そうそう試せるものではありません。
今こそGOODタイミングだ!ということで、有精卵を3つだけ孵化させてみることにしました。
(※雄鶏が生まれたら大声で鳴いて近所迷惑なので、かなりの山奥住まいでない限りは孵化はオススメしません。もし興味がある場合は、間違いなく雌鶏であると分かっているヒナの購入をオススメします※)
15年ぶりの眠気らしきものがきた
私は孵卵器を買うようなお金もありませんでしたので、サーモスタット付きのヒーターを買い、100均で温度湿度計を買い、ほぼつきっきりで孵化に挑戦しました。
「4時間おきに卵を転がさなければいけない」のは夜中も同じなのですが、不眠症なだけあって問題なく夜の間も卵を転がしていました。
しかし、3日目の夜のことです。
15年も感じたことがなく、どんな感覚だったかすら全く思い出せなかった「眠気」っぽいものが、突然やってきたのです。
あまりに久しぶりのことで、これが眠気なのか?と分からなかったくらいですが、何となく体から力が抜けるような感じでした。
そしてそれは徐々に強くなっていき、ある時に気付くと、横になって1時間ほど眠っていたようなのです。
ビックリでした。まさか薬なしで眠れる日が来るとは、思ってもいなかったんですから。
それからは、たまに気絶するような感じで1時間か2時間眠れることが、1日に数回訪れるようになりました。
心療内科の院長も言っていましたが、「起き続けていればいつかパタッと眠れる」というのは本当に本当でした。
限界がきたら、さすがに眠れるようです。
眠ったらダメと思うほど眠くなる
鶏の卵は21日で孵化します。つまりは21日間は4時間おきに転卵しなくてはいけないのです(最後の最後はしなくてOKですが)。
1週間を過ぎると、4時間おきに卵を転がすのが大変なくらい、眠くなってきました。
もう1週間もまともに寝ていないのです。そりゃ眠くなります。しかも、眠ったらダメだ!と思うと余計に眠くなります。
ですが、眠くてもやはり1時間か2時間までしか眠れない状態が続きました。続けて眠るというのが難しいのです。
眠って体力の回復ができないため、体力はきつかったですが、可愛い卵のためになんとか頑張ります。
そして21日目……1羽だけでしたが、元気なヒヨコが生まれたのです!!
なお、この21日間だけは睡眠薬を一切飲みませんでした。寝ちゃったら困るので^^;
子(雛)育てであまり眠れない日々を過ごす
孵化してからも、温度や湿度の管理は大変ですし、なにより生まれてすぐ私を見たひよこは、私から離れるのを嫌がるのです。
仕方がないので私の膝の上にクッションを置き、クッションの上にヒーターを置き、その上にタオルを敷いて、ヒヨコを抱くという日が続きました。
うっかり眠ってしまったらヒヨコが危ないので、あまりに眠い時は飼育箱に戻して仮眠していましたが、この頃になると「眠気ってこれのことか!」というのが分かるようになってきていました。
なかなか続けて眠るのは難しいものの、うまくいくと3時間を超えて眠れることも出てきました(この頃は弱い睡眠導入剤を服用)。
人工孵化に挑戦したお陰で睡眠薬もかなり減らせたし、眠気とはどんなものかも思い出せたし…睡眠導入剤のみで3時間も眠れるようになるなんて大したものです!
この経験後、せっかくだからまた睡眠薬を飲まなければいけない状態に戻さないよう、なんとか薬なしで眠れる日が来るように色々と工夫しつつ生活し、今では全くの薬なしで眠れるようになりました(今回はきっかけについての記事なのでこちらはまた別記事にでもまとめますね)。
「眠れないことが怖い」を逆転させた
私が不眠症の時に一番怖かったのは「眠れなかったらどうしよう」「眠気が来ない、どうしよう」「全然眠れないどうしよう」ということでした。
つまり、眠れないこと自体が怖かったのです。
逆に言えば『眠らなければならない』という意識がかなり強く心の中にありました。
【眠らなければいけないにもかかわらず、眠ることができない】というのが大きなストレスになっていたのではないかと、今は思うのです。
私は当時、「~でなければならない」というmustの考えがかなり多かったです。
お陰で色んな行動に色んな制限が付き、それを理想通りにこなせそうにないので諦める、ということが多かったんですよね。
しかし、人工ふ化に挑戦した時にはこれがひっくり返りました。「眠らなくてはならない」から、「眠ってはいけない」になったのです。
眠らないとどうなるかというと、先ほども書きましたが不眠3日目くらいになると限界が来て、気絶するように眠れました。私の場合。
最初は短時間だけしか眠れませんでしたが、それでも眠れたのです。
というか、気付けば時間が経っていた感じです。
『眠ってはいけない』という状況になったために『眠らなくてはいけないというストレス』は消え去ったのではないかと思います。
とはいえ「無理に眠らなくていいと考えろ」と言われても、当時の私には難しいことでした。いや、眠らなきゃダメじゃん。みたいな変な頑固さがあったのです。
それが「眠ってはいけない」になり、ある意味、無理に眠らなくてもいいという状況になったのです。
これが私にとって、良いきっかけになってくれたのだと思います。
なるようにしかならないという考え方
当時の私は、『なるようになる』なんて考えは絶対にできませんでした。
しかし、『こうでなくてはならない、例外は許さない』という考え方だと、どうしても精神的にストレスが溜まります。
でも現実、なるようにしかならないのです。ある意味、諦めも肝心なのです。
私は眠れませんでした。眠れないんだから眠れないんです。それを許さないとか責めるとか、そういう自責の念は必要なかったのです。
だって眠れないんだから。仕方がなかったんです。
それをどうにかしようとして失敗し、失敗を責め、何とか眠ろうとし…でもうまくいきませんでした。
もし眠れなくて悩んでいるのなら、状況的に可能であれば、『眠れないんだから逆に眠らないぞ!』という実験をやってみてもいいかもしれません。
(※車の運転をしなければいけないとか、仕事があるとか、そういう方はもちろんやめておきましょう。でも週末や連休にならトライできるかも)
最後に。この時に生まれた鶏は雌鶏で、毎日のように卵を産み続け、よく人に懐き、私が取ってきたミミズやカマキリなどをよく食べ、6畳ほどの鶏小屋の中をかけ回って育ち、3年7か月も元気に生きました^^ (卵を産んだ数から考えればかなりの長生きでした)